ケンタッキーダービー
ケンタッキーダービーは、アメリカ合衆国のケンタッキー州ルイビル市にて毎年5月の第1土曜日に開催される三歳馬限定の競馬の大レースで、アメリカ三冠レース(Triple Crown)の1つです。
1875年に初めてレースが開催されてから毎年観客数は増え続け、今では15万人もの人々が「スポーツの中で最も偉大な2分間」(The Most Exciting Two Minutes in Sports)を見るために国内外から訪れます。
そのダービーの2週間前から始まるダービーフェスティバルをはじめ、市内の至る所で沢山のイベントが開催され、ルイビル全体がお祭り騒ぎになるのです。
2024年は第150回目の開催となる記念の年なので、長年の競馬好きはもちろん、全く競馬を知らない人たちも含め更に多くの観光客が訪れることは間違いありません。
0.001%の奇跡
アメリカでは毎年2万頭弱、日本でも7000頭以上、そしてその他諸外国でも沢山の競走馬の仔馬が産まれています。
その馬たちが3歳になる年、一生に一度しかないチャンス、ケンタッキーダービーの出走権をかけてレースに挑みます。
その中でダービーを実際に走ることができるのがたったの20頭とすると、その確率は千分の1以下!わずか0.001%にも満たない数の、サラブレットだけが走ることのできるケンタッキーダービー。
そのスタートゲートに立っているというだけで、もうすでにすミラクルなのですね。
ラン・フォー・ザ・ローゼス
ケンタッキーダービーの優勝馬には赤いバラのレイ(ガーランド)がかけられるので、「バラのためのレース/(Run for the roses)」ともよばれます。
あのレイには約400本のフリーダムローズという種類のバラが使用されていて、12人のフローリストたちが手作業で一本一本を裏地に丁寧に縫い付けていきます。この作業は8時間から10時間ほどかかります。
毎年、ダービーの先日の夕方にルイビル、ミドルタウンのクロガーというスーパーにマスターフローリストたちが集まり、レイの作成作業をはじめます。作業は店舗の一部に囲いを作って行われ、全てのプロセスは一般公開されています。バラの香りが広がる店内に、毎年6000人もの人々がこのイベントのために集まります。
完成後はダービー当日の朝まで店内に展示された後、チャーチルダウンズ競馬場まで運ばれます。
チャーチルダウンズ競馬場までは警察の護衛とともに運ばれ、午前10時30分から午後1時30分まで一般公開されている間から優勝馬とジョッキーに贈呈されるまでもケンタッキー州兵によって厳重に警備が続けられます。
これは単なる美しいフラワーアレンジメントではなく、ケンタッキーダービーのアイデンティティに深く刻み込まれている伝統なのです。またバラの鮮やかな赤には、情熱、勇気、偉大さの追求という思いが込められ、また勝利、卓越した能力、そして持久力の象徴でもあります。
とても綺麗で豪華なレイですが、実は重さは18キロにもなるので、馬からすると実は『大変なレースを走った後に、さらに重たいものを掛けられ、溜まったもんじゃない』という気持ちなのかもしれませんね。
優勝騎手には、60本のフリーダムローズを10ヤード(9.14メートル)のリボンで巻いたジョッキーズ・ブーケが贈られます。
アメリカ三冠レースとは
プリークネスステークス メリーランド州 ピムリコ競馬場:ダート1マイル3/16 約1911メートル
ベルモントステークス ニューヨーク州 ベルモントパーク競馬場:ダート1マイル1/2 約2414メートル
毎年5月から6月にかけて行われる3レースは全て3歳のサラブレッドに限定されていて、出場資格が一生に一度しかありません。これらのレースにすべて勝つと、三冠制覇、そしてトリプルクラウントロフィーを受け取ることができるのです。
その中でも、ケンタッキーダービーは三冠レースの初戦であり、賞金額も高額なため、競走馬や関係者にとって非常に重要なイベントとなっています。
実はこのアメリカ三冠レースのいずれにも牝馬の出場が可能なのですが、ケンタッキーダービーの前日に行われるオークス、そして翌月から始まるニューヨーク牝馬三冠(New York Triple Tiara)もあるため、牝馬がこのクラシック三冠レースに出場することは多くないそうです。
ちなみに、日本からこの三冠レース全てに出走しているのは、2016年のラニだけです。(記事執筆時)
ケンタッキーダービーの始まりと今
ケンタッキーダービーは1875年にメリウェザー・ルイス・クラークによって創立されました。
ヨーロッパを訪問した際に、イギリスのダービーステークスが行われるエプソム競馬場や、フランスの名門ジョッキークラブを訪れるなかで沢山の情報を集め、帰国後すぐにルイビル・ジョッキークラブを設立。そして街のすぐ外に競馬場を建てるための資金集めを始めました。建てられた競馬場は、クラーク氏の親戚であり、土地の提供者でもあるジョンとヘンリー・チャーチルにちなんでチャーチルダウンズと呼ばれ、すぐに有名になったのです。
初めてレースが行われたのは1875年で、アメリカで途切れることなく毎年開催されているスポーツのイベントとしては最も古いものの一つでもあります。
1万人から始まった来場数も、今では15万人もの人々が歴史的な瞬間を見るために訪れます。また賞金額も大幅に増え、2024年は150回目の記念の年に相応しく史上最高額の総額500万ドルと発表されました。そのうち310万ドルは一着の優勝馬が受け取ります。
レースの出走条件は
レースに出られるのは3歳馬のみです。
ケンタッキーダービーに出走するためには5万ドル(約750万円)という、とても高額な登録料を支払話なくてはいけないだけでなく、ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーと呼ばれる対象レースに出走し、各レースの上位5着の馬に与えられるポイントの合計で、上位20位までに入ることが必須条件です。
ちなみに2023年に20位で出走権を得た馬は、45ポイントでラン・フォー・ザ・ローゼズへの道を獲得しています。
ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー
アメリカ国内の対象レースはアーカンソー州、オクラホマ州、カリフォルニア州、ケンタッキー州、ニューヨーク州、フロリダ州、ルイジアナ州の7州、13の競馬場で合計36レースが開催されます。それにドバイで開催されるUAEダービーの1レースが加わり、37レースでメインロードと呼ばれます。
日本でのロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー
日本版のケンタッキーダービーへの道 Japan Road to the Kentucky Derby は2017年に導入されました。
カトレア賞(10-5-3-2-1)、全日本二歳優駿(20-10-6-4-2)、ヒヤシンス賞(30-12-9-6-3)、福竜賞(40-20-12-8-4)から成り、この4レースの合計で最も多くのポイントを獲得した馬には自動的にケンタッキーダービーへの出走権が与えられるのです。
また同じ年に、ヨーロッパ版のケンタッキーダービーへの道(7レース)も導入されています。
日本馬の活躍
ダービーに出走した日本馬の過去の最高着順は2019年のマスターフェンサー、及び2023年のデルマソトガケの6着と上位争いにはまだ加わっていないのですが、今年2024年はUAEダービー1着のフォーエバーヤングや、ジャパンロードを勝ち抜いた、テーオーパスワードに期待が高まりますね。
観戦の際は
伝統あるケンタッキーダービーには社交的な要素も含まれ、スポーツイベントとしてだけでなく社会的なイベントとしてもても注目を集めています。
運が良ければ有名人に遭遇するかもしれません。また、他の来場者の奇抜な衣装を見たり、美味しい食べ物や飲み物を楽しんだり、ケンタッキーダービーは競馬好きでなくても、エキサイティングな体験ができます。
ファッションを楽しむ
観客は皆つばの広いフォーマルな帽子を被ったり、豪華なアクセサリーやドレスを身につけて来場します。
そのためファッションイベントとしても有名なので、日本では『少し派手かな?』と思うようなダービーファッションをぜひ皆さんも楽しんでください。
ちなみに帽子のつばは広ければ広いほど良いそうです。
ケンタッキー州の州歌はKFCの曲?
レースの前にはケンタッキーダービーの歌とも言われる「マイオールドケンタッキーホーム」をルイビル大学マーチングバンドの演奏と共に、来場者全員で大合唱。
実はこのケンタッキーの我が家という曲、KFCケンタッキーフライドチキンのCMに使われていたので、日本人のほとんどの人が一度は聞いたことがあると思います。
現地で他の参加者と一緒に鼻歌でもいいので歌ってみると、まわりのアメリカ人は喜ぶこと間違いないでしょう。
ダービーの公式ドリンク
そしてダービーに欠かせない伝統的な飲み物といえば、ミントジュレップ!
ミント・ジュレップの材料はバーボンウィスキー、ミント、砂糖(シロップ)で、とてもストロングなお酒です。クラッシュアイスがグラスに山盛りに入ってくるのでそれを溶かしながらゆっくり飲んでください。